2017.8.22 更新

弁護士特約は家族が別居していても適用される|条件とケースを解説

家族が加入する弁護士特約を使える血縁関係の範囲

自動車保険に弁護士特約を付加していると,弁護士費用や裁判費用が一定額まで保険でカバーできる大きなメリットがあります。この弁護士特約は,自分名義で加入している保険だけでなく,一定の家族名義の保険に付加されている場合にも利用することができるのが一般です。
一般的な弁護士特約での補償対象者(特約が利用できる事故当事者)は次のような人です。
①被保険者本人
保険契約で定められた保険の対象者で,通常は契約をしている本人のことです。
②被保険者の配偶者
被保険者の夫や妻のことです。
③被保険者またはその配偶者の同居の親族
被保険者と同居している父母,兄弟姉妹,子などのことで,いわゆる義理の親族(配偶者の親族)も同居していれば含まれます。
④被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
被保険者の子が実家を出て暮らしている場合などには,その子も対象となりますが、未婚であることが必要です。
⑤契約車に搭乗中の者
①~④以外の人でも契約車に搭乗していた人は対象になります。
⑥契約車の所有者
①~⑤以外の人でも契約車の所有者が別にいる場合にはその人も対象となります。
このように,弁護士特約は保険の契約をしている本人以外が交通事故に遭った場合にも利用が可能です。事故に遭ったときには,自分が加入している保険に弁護士特約を付加していない場合でも,親族などの保険が利用できないかを確認しましょう。

家族の加入している弁護士特約は別居する家族に対して適用できるの?

一般的な弁護士特約は,被保険者ではなくても親族にも適用されますが,適用される親族は原則的には被保険者またはその配偶者と同居している親族です。典型的な例は,被保険者と同居している子や親,被保険者と同居している義理の両親などです。
ただ,同居をしていなくても弁護士特約が適用される場合もありますので注意しましょう。
まず,被保険者が仕事等の事情で家族と別居している場合であっても,被保険者の配偶者には特約が適用されます。配偶者は同居別居の区別なく適用対象となるということです。
次に,被保険者の子が未婚の場合には,被保険者と別居していても特約の適用があります。例えば,被保険者の子が遠方の大学に通うために下宿していて被保険者と同居してないような場合にも特約を利用することができます。被保険者自身の子ではなく,配偶者の子(いわゆる連れ子)の場合にも同様に特約の利用ができます。
ただ,あくまで「未婚」の子でなければなりませんので,別居している子が結婚している場合には被保険者の特約の適用はありません。
さらに,被保険者と別居していても,たまたま契約車に乗っていて(運転,同乗いずれも含む)事故に遭った場合にも特約を利用できます。お盆に実家に帰ったときに実家の車で事故に遭った場合などが考えられます。
また,被保険者と別居していても,契約車を所有していればその所有者にも特約は適用されます。自分名義の車を実家に置いたまま結婚し,車はそのまま実家の家族が使用して保険も家族が掛けているような場合に,久しぶりに自分でその車を運転したら事故に遭ったようなケースが考えられます。
以上のように,別居の親族であってもかなり広い範囲で特約の適用があります。

家族の弁護士特約が適用される交通事故のケース

父親が所有している車を子どもが運転していて事故に遭うということは珍しいことではありません。普通このようなケースでは加入している任意保険が適用されて,その保険を利用することによって弁護士も利用できるのですが,こちらにまったく過失がない形での事故(信号待ち中の追突事故などのいわゆるもらい事故)ではこちらの任意保険を利用することができず,保険を通じて弁護士を利用することもできません。任意保険本体はあくまで交通事故において加害者となった場合に備える保険ですので,過失がまったくない事故当事者は加害者とは言えず,任意保険本体が適用されないことになるのです。しかし,このような場合に弁護士特約を付加していると,この特約によって過失のない一方的な被害者も保険によって弁護士を利用することができ,この特約は一定の範囲の親族も利用できるのです。
また,この弁護士特約は,被保険者(及びその一定範囲の親族)が自動車事故によって受けた損害の賠償を行う際に適用されるものですので,こちらが車に乗っていない形での自動車事故に遭った場合,例えば青信号の横断歩道を徒歩や自転車で横断していたら信号無視の車に衝突された場合などにも適用があります。車対車の事故だけでなく,交通事故一般の被害を受けた場合に利用できるのです。人身事故のみならず,物損事故の場合にも利用は可能なものが一般的です。
なお,弁護士特約はこちらに過失がある事故の場合でも利用することができます。この点勘違いされていることも多いようですので付け加えておきます。

家族の弁護士特約を利用するデメリットとは

家族の弁護士特約を利用する場合に気になるのが、それを利用することによって何かデメリットが生じないかということです。
最も気になるのが,弁護士特約を利用することによって保険の等級が下がってしまうのではないかということでしょう。自分の保険なら等級が下がることもやむを得ないと思うこともできますが,家族とはいえ他人の保険を使うときにはやはり気になることです。
しかし,一般的には弁護士特約の利用によって保険の等級が下がることはありませんので,心配する必要はありません。弁護士特約の利用は事故にカウントされることはありません(ノーカウント事故)。したがってノンフリート等級には影響することはありません。
その他にも家族の弁護士特約を利用することによるデメリットはないといってよいでしょう。もちろん,保険に弁護士特約を付加すればその分保険料は高くなりますが、これは家族の弁護士特約を利用することから生ずるデメリットというわけではありませんし,特約の保険料自体も年2000円~3000円程度のものが多くさほど高いものでもありません。

弁護士特約が使えない事故のケースや条件

弁護士特約は大変便利な特約ということができますが,注意しなければならないのは弁護士特約が利用できないケースがあるということです。具体的には各保険会社によって異なりますが,一般的には次のようなケースでは弁護士特約は利用できません。
(1)被保険者の故意または重大な過失によって生じた事故
(2)無資格運転,酒気帯び運転,麻薬等の薬物の影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転での事故
(3)事業用自動車を運転している場合に発生した事故
(4)地震,台風,津波などに起因する事故
(5)被保険者が、自動車の使用について正当な権利を有する者の承諾を得ないで自動車に搭乗中に発生した事故
(6)被保険者の闘争行為、自殺行為または犯罪行為によって発生した事故
(7)被保険者の配偶者,父母,子,使用者などが賠償義務者である場合
これら以外にも,約款には細かく保険金が支払われない場合が定められています。
さらに注意すべきは,弁護士特約の利用には保険会社の同意を得る必要があることです。特約を利用して弁護士に依頼しようとする場合には,必ず事前に保険会社に相談する必要があります。

訴訟まで考えてなくても家族の弁護士特約を利用していいの?

交通事故で弁護士を利用するというと,多くの人は加害者に損害賠償を請求する訴訟を提起することを想像するのではないでしょうか。
しかし,交通事故で弁護士が活躍する場面は訴訟に限りません。賠償額が適正かどうかの相談を受けたり,賠償請求の交渉を依頼したり,弁護士は交通事故のあらゆる場面で活躍の場を有しています。
弁護士特約も,弁護士に損害賠償請求訴訟を依頼する場合の費用に限らず,弁護士に法律相談をする場合の相談料,相手方との賠償に関する交渉を依頼する場合の費用もカバーしています。したがって,訴訟提起までは考えていない場合でも弁護士特約を利用して弁護士費用を保険でまかなうことができます。
ただ,弁護士特約には保険金の限度額が設定されています。一般的には,訴訟・交渉などに関する弁護士費用は300万円まで,法律相談料は10万円までとされています。多くの弁護士は法律相談料を30分5000円程度に設定していますので,相談を繰り返しているうちに限度額に達してしまうこともあり得なくはありませんので注意しましょう。

弁護士特約の利用で最初にすべきこと

弁護士特約を利用するといっても,初めて利用する際にはどのように利用したらいいのかわからないというのが多くの人が感ずることでしょう。弁護士特約を利用するにはまずは何をしたらよいのでしょうか?
利用するに当たっては2通りの手順があります。
1つは,自分で相談・依頼する弁護士を見つけて相談することです。弁護士を見つける方法としては,インターネットでの検索,弁護士会や行政の開催している法律相談窓口への申し込みなどの方法がありますが,そのようにして見つけた弁護士にまずは法律相談をし,弁護士特約を利用して費用を支払う方法で相談や依頼をしたい旨を話してみることです。弁護士の了解が得られれば正式に相談や依頼を行うことになりますが,普通は快く了解を得ることができるでしょう。なお,自分で見つけた弁護士に相談・依頼する場合には,事前に保険会社にその旨を相談して了解を得ておく必要がありますので注意しましょう。
2つ目の方法は,保険会社に弁護士を紹介してもらう方法です。自分で弁護士を見つけることができない場合にはこの方法によることになりますが,この方法によると保険会社から日本弁護士連合会のリーガル・アクセス・センター(LAC)を通じて弁護士が紹介されます(なお,東京海上日動や通販型の自動車保険会社などはこのLACに加入していませんので独自に弁護士を手配しているようです)。
いずれの方法が良いかは考え方次第です。1つ目の方法によれば弁護士を自分で選択することができる点にメリットがあり,2つ目の方法には弁護士を探すという面倒な作業を省略できるメリットがあります。

弁護士特約の重複

複数の保険のそれぞれに弁護士特約を重複して付加しても多くの場合には保険料の無駄になってしまいます。同居している家族のそれぞれが車を持っていて,それぞれの車の自動車保険(任意保険)に弁護士特約を付けていても,同居の親族の事故は1つ目の弁護士特約でカバーできてしまいますので,2つ目以降の弁護士特約は利用の機会がないことになります。したがって,複数の自動車を持っている家族は,保険料の無駄を避けるためにお互いの自動車保険の内容を確認し合っておいた方がよいでしょう。
ただ,弁護士特約の重複が役に立つケースもないわけではありません。一般的な弁護士特約は弁護士費用の限度額を300万円に設定していますが,これを超える費用が掛かってしまう場合には2つ目以降の保険で超過分をカバーすることができます。ただし,弁護士費用と裁判所に掛かる費用が300万円を超えるケースはさほど多くはありませんし,解決後の成功報酬分については相手方から受領した賠償金から支出することもできますので,あえて弁護士特約を重複して加入するだけのメリットがあるかどうかはよく検討して決めましょう。

行政書士などへの依頼でも家族の弁護士特約を活用できる

交通事故に関する専門家の費用をカバーする保険の特約は一般的に「弁護士特約」と呼ばれていますので,弁護士費用のみがカバーされると考えている人も多いようですが,実際には弁護士以外にも,司法書士や行政書士を利用した場合の費用もカバーされます。
行政書士は,弁護士とは異なり相手方との交渉などの業務を行うことは法律上できませんが,交通事故の被害者が自賠責の被害者請求を行う場合に提出する書面を作成するなど交通事故に関する一定の書類作成に関する業務を行っています。これらの業務に行政書士を利用する場合には弁護士特約を利用することによって行政書士費用を保険でまかなうことができます。
なお,司法書士も行政書士同様の書類作成業務や,簡易裁判所における損害賠償請求訴訟などの場面で交通事故を扱うことがありますが,この司法書士費用も弁護士特約でカバーされます。
さらに,弁護士・司法書士・行政書士費用だけでなく,訴訟費用(訴訟を提起した場合の裁判所の手数料)も弁護士特約でまかなうことができます。
このように,「弁護士特約」という呼び方がされていますが,弁護士特約は交通事故の損害賠償請求に関して生ずる費用を広くカバーしていますので,事故後に何か出費の必要が生じた場合には保険会社に特約の適用がないか確認した方がよいでしょう。

家族の加入する弁護士特約の利用に関する保険会社による基準の違い

弁護士特約は各保険会社の自動車保険の特約として用意されています。その内容,約款は各社とも似たものになっていますが,細かい点では保険会社ごとに異なっているのも事実です。
例えば,弁護士費用300万円の限度額とは別に法律相談料を10万円の限度額で補償するものが多数ですが,保険会社によっては法律相談の別枠を設定していないところもあります。
また,損害保険会社によっては自動車保険以外の損害保険(火災保険,傷害保険など)にも弁護士特約を付帯できる場合や,他の保険の特約ではなく単独の保険として同じ内容の保険商品を設定している保険会社もありますし,自動車事故以外の場面で生ずる弁護士費用をカバーしているタイプの弁護士特約も存在しています。
なお,弁護士特約の具体的な運用の場面では,保険会社ごとに扱いが異なることがあります。保険会社によっては弁護士特約の利用に同意することに消極的なところもあるようです。もし,保険会社が正当な理由がないのに弁護士特約の利用に同意しないようであれば,依頼予定の弁護士から連絡をしてもらって保険会社と交渉をしてもらうとよいでしょう。
また,弁護士費用を具体的に幾ら補償するかについても保険会社によって基準が異なります。弁護士はそれぞれの報酬基準を持っており,それに基づいて費用を請求しますが,保険会社はLACや社内の基準に収まる金額しか弁護士費用を認めないことがあり,そのような場合には差額を依頼者自身が負担せざるを得ないことにもなりかねません。弁護士費用の額や算定基準については,あらかじめ弁護士と保険会社間で確認しておいてもらえるよう担当弁護士に頼んでおくのが無難です。

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