2017.9.1 更新

交通事故で加害者の悪質な態度が許せない|被害者はどうすればいい?

自分でできる対処法

交通事故に遭った場合,事故状況によっては,一方的な過失ではなく,双方に過失が存在することもよくあります。
また,事故状況についても,信号が赤だったか,黄色だったかなどで,事故当時者で食い違うこともあります。
そのような場合に,事故の相手方が,事故状況について不合理な言いがかりをつけてきたり,事故現場から立ち去ろうとするなどの悪質な行為に出ることもあります。
また,自分にも交通事故について過失があった場合に,相手方から不当な請求を受けることもあります。

交通事故に遭った場合,まずは,警察に連絡し,事故直後に,事故の発生状況を説明する必要があります。
仮に,警察が来るまでに,相手方が,現場を離れるようなことがあれば,自動車ナンバーを控えておく必要があります。

また,自らが加入している自動車保険にも,事故発生の報告をする必要があります。

事故の相手方が悪質な態度の場合には,可能な限り,警察や,自らが加入する保険会社に対応を任せることが賢明です。

証拠に残す上手な方法

事故状況について,相手が嘘の説明をするなどの場合,過失割合に争いが生じる可能性があります。
そのようなことを防止するためには,ドライブレコーダーを設置することが望ましいでしょう。
ドライブレコーダーを設置する車両も増えてきており,価格も1万円程度で購入できます。
相手が悪質で,事故状況について嘘をついたとしても,ドライブレコーダーの映像は客観的で確実な証拠となりますので,まさかの事故発生に備えて,ドライブレコーダーを設置することをお勧めします。
また,事故車両や事故現場を写真撮影しておくことも重要です。
仮に相手が,嘘の事故状況を説明したとしても,事故車両や事故現場の客観的状況と合致していなければ,相手の説明内容の信用性は小さくなります。

事故状況だけでなく,不当な要求などがある場合,相手と直接やりとりする場合は,言った言わないという水掛け論を防ぐため,会話内容は録音しておくことで証拠に残すことができます。
相手に無断で会話内容を録音することは,何ら違法な行為ではありませんし,裁判でも証拠として認められます。

また,相手と直接やりとりをする場合でも,請求や言い分を文書で送り,回答についても文書で求めることも証拠として残すためには有用です。

相談相手とタイミングについて

交通事故の加害者が,損害賠償を免れようと,脅迫まがいの行動に出ることもあり得ます。
そのような場合には,すぐに警察に相談したほうがよいでしょう。

脅迫まがいの行為とまではいかなくとも,悪質な態度をとる加害者と,自分で交渉して,適正な損害賠償を得ることは困難です。
そのような場合には,弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士の知り合いがいなくても,日弁連(日本弁護士連合会)交通事故相談センターが,各弁護士会において,無料法律相談を実施しています。
また,多くの自動車保険会社が日弁連と協定を結んでおり,弁護士費用特約に加入していれば,保険会社を通じて,各弁護士会の弁護士の紹介を受けることも可能です。
交通事故の示談交渉や損害賠償を求める裁判は,弁護士でなければ代理人として行うことはできませんので,相談相手としては弁護士が最適でしょう。

相談するタイミングについては,できるだけ早い段階で相談することをお勧めします。
事故直後で,依頼するには早い段階であっても,悪質な相手への対応のアドバイスや,今後の流れなどを説明してもらうことで,安心して治療に専念することができます。
また,弁護士費用特約に入っていれば,法律相談費用も保険会社が負担しますし,弁護士費用特約に入っていなくても,各弁護士会で無料交通事故相談を実施していますので,費用の負担なく,相談を受けることができます。

弁護士による対応策とは?

弁護士に依頼すると,まずは弁護士が受任したこと,今後は弁護士が交渉の窓口となることを加害者に文書で通知し,加害者から依頼者へ直接連絡を取ることを控えるよう要請します。
これにより,被害者は,悪質な加害者と直接やり取りをする必要はなくなります。
中には,弁護士が通知を行っても,加害者が被害者へ直接連絡を取ることがまれにあります。
このような場合には,弁護士にすべてを任せている旨伝えて,連絡を拒否すればよく,着信拒否などで応答を拒絶しても大丈夫です。

加害者がどれだけ悪質な対応を取ったとしても,弁護士としては,依頼者の正当な権利を守るため,適切な損害賠償額を計算し,加害者に請求することになります。
もっとも,そのように悪質な態度の加害者が適正な金額の損害賠償に応じない可能性も高いので,そのような場合には,裁判で損害賠償を請求していくことになります。

警察は対処してくれるのか?

警察は民事不介入といって,民事的な損害賠償請求や交渉などについては,対処してくれません。
もっとも,交通事故被害に遭った場合,加害者は,自動車運転過失傷害罪という犯罪に該当することになるので,警察や検察庁での取り調べを受けることになります。
また,被害者も,同様に警察で取り調べを受けることになります。
被害者として取り調べを受ける際に,加害者の悪質な態度について,詳細に説明し,供述調書を作成してもらうことで,加害者の刑事責任が重くなることが考えられます。
また,被害者としての取り調べの際に,加害者の悪質性を説明しておくことで,加害者に対する取り調べにおいて,警察から注意・指導や反省を促すなどをしてもらえる可能性もあります。

事故について,自分にも過失があり,過失割合(事故発生についての落ち度の度合い)に争いがある場合場合,事故の相手が自分が被害者だと一方的に主張して,脅迫的な言動で,不当に高額な賠償や,高圧的に謝罪を求めてくるようなケースも考えられます。
そのような場合には,脅迫罪,恐喝罪にあたることもあるので,警察に相談することで,不当な要求を免れることにつながることがあります。
相手の悪質な態度により,身の危険を感じるようなことがあれば,迷わずに警察に相談してください。

交通事故紛争処理センターは役に立つ?

交通事故紛争処理センターは,加害者が任意保険に加入しているケースで,被害者と加害者側保険会社との示談交渉がうまくまとまらない場合に,被害者と加害者側保険会社との間に立って,担当弁護士が公正な第三者として和解のあっせんを行ったり,和解がまとまらない場合に,審査委員会において賠償額の審査・裁定を行う機関です。
つまり,交通事故紛争処理センターは,加害者側が任意保険に加入しており,示談について任意保険会社が対応している場合に利用が可能です。
加害者が悪質な対応を取っていたとしても,任意保険会社が示談交渉に応じているのであれば,悪質な加害者とは直接連絡を取る必要はなく,任意保険会社と交渉することになります。
そのような場合で,任意保険会社との示談がまとまらない場合であれば,交通事故紛争処理センターを利用し,和解のあっせんや,審査・裁定を求めることができます。

加害者が悪質な態度で,任意保険に加入していない場合や,加入していても自らに過失がないなどと主張して加入している任意保険を使わないということも考えられます。
このような場合には,交通事故紛争処理センターは利用できません。

交通事故紛争処理センターの利用はあくまでも,加害者側任意保険会社が対応している場合のみであり,それ以外の場合には利用することはできません。

悪質な態度で慰謝料増額?

加害者が悪質で著しく不誠実な態度がある場合には慰謝料の増額理由となります。
裁判例では,以下のような要素で慰謝料額が相場よりも増額されています。
・事故後救助活動を一切行わなかったこと
・現場から逃走したこと
・現場から逃走したうえ,加害車両の損傷部分を塗色により修理して隠ぺいしたこと
・信号無視を自覚していたにもかかわらず,青信号で侵入したと虚偽の説明をしていたこと
・刑事裁判では治療費を全額支払うと述べていたにもかかわらず,刑事事件終了後,治療費の支払いを打ち切ったこと
・刑事裁判の中で責任を否認したり,不合理な弁解に終始していたこと

このように,加害者の悪質な態度は,その程度によっては,慰謝料の増額理由となります。
増額の割合は後遺障害の内容や,悪質さの程度によって異なりますが,相場の1割から3割増し程度になることが多いようです。

犯罪被害者保護制度の活用法

犯罪被害者保護制度は主に刑事事件に関する手続となります。
死亡事故や重い後遺障害が残るような重大事故を発生させ,しかも悪質な態度をとる加害者の場合には,略式命令による罰金刑ではなく,通常の刑事裁判手続が取られることになります。
昔は,刑事事件に被害者が主体的に関与する制度がありませんでしたが,現在では犯罪被害者保護法や刑事訴訟法の改正により,被害者が刑事裁判手続に参加すること(被害者参加と言います。)が可能です。
被害者参加は,被害者自身のみではなく弁護士が被害者の弁護人として活動することもできます。

被害者参加のために,交通事故の刑事裁判において,被害者は手続への参加を申し出ることができ,相当と認められるときは参加を許可されます。
刑事裁判は検察官が遂行することになりますが,被害者参加人は検察官に対して訴訟遂行について意見を述べることができます。
また,証人尋問や被告人質問についても被害者参加人が行うこともできます。
さらに,事件について,被害者が意見を述べることや論告求刑を行うことも可能です。
これらのほかに損害賠償命令制度というものがあり,刑事裁判終了後に刑事事件にかかわる犯罪行為についての損害賠償の命令を迅速に行う制度ですが,対象が「故意」による犯罪に限定されますので,過失による交通事故の案件では,利用することはできません。
損害賠償命令制度とは別に,刑事和解という制度があります。
これは,被害者及び加害者間で示談に合意した場合に,刑事事件の公判調書に記載することで,仮に,示談の内容を加害者が履行しない場合でも,民事裁判を起こすことなく,強制執行をすることのできる制度です。

以上のような被害者参加手続を通して,悪質な交通事故加害者に対し,被害者が主体的に参加したうえで,刑罰を決めることで,一定程度被害者の心情も判決に反映されることが期待でき,事件の内容や悪質さの程度に見合った刑罰を与えることにつながります。
また,適切な金額の損害賠償額で合意できれば,刑事和解により,別途民事訴訟を起こすことなく,損害賠償額が確定し,これが履行されない場合には強制執行をすることが可能となります。

示談交渉を進めるべきか?

悪質な相手に対して,示談交渉を行い,合意に至ることは困難なケースが多いでしょう。
適切な基準での損害額を計算した上で,これを加害者に提示しても全く誠意のある対応が見られないような場合には,示談交渉を進めても,時間が無駄になるばかりで,解決までの期間が延びるだけになってしまいます。
そのような時は,裁判を起こすほうが,適正な損害賠償につながります。
加害者が任意保険に入っている場合には,判決で決められた損害賠償額は,保険会社が支払うことになるので,確実に回収することができます。
仮に,加害者が任意保険に加入していない場合でも,示談を締結しただけでは,加害者が示談金の支払いを怠った場合には,示談書だけでは強制執行をすることができず,改めて裁判を起こして判決を得る必要があります。
このように,加害者が悪質な場合には,加害者が任意保険に加入しているか否かを問わず,示談ではなく,裁判手続をとるほうがよいでしょう。

保険会社も悪質な場合の対応

保険会社は,被害者に弁護士が介入していない事案では,加害者が悪質か否かを問わず,裁判所で通常認められる基準よりも低額の基準に基づき,損害額を計算します。
また,治療期間を正当な理由もなく,短期間しか認めなかったり,過失割合について不合理な主張を行うなどのケースもあります。
休業損害や,後遺障害逸失利益についても,極めて低額な提示にとどまるなども考えられます。
ひどいケースでは担当者の怠慢から,いつまでたっても示談金額を提示してこず,放置されるようなケースも稀に存在します。

そのような場合には,裁判を行うことも検討する必要があります。
ただし,裁判をすると解決までに短くても半年程度はかかり,判決確定まで1年以上かかることも少なくありません。
事故状況が警察の実況見分調書で明らかになっている,後遺障害の等級も認定されている,事故当時の被害者の収入の資料もあるなど,被害者や保険会社が悪質なだけで,本来,それほど事実関係について争いになる部分が少ないようなケースでは,交通事故紛争処理センターを利用することが早期解決につながることも多いです。
交通事故紛争処理センターは,公正な立場の担当弁護士が資料と加害者及び被害者双方の主張を聞いたうえで,和解のあっせんを行います。
損害算定基準も概ね裁判基準と同様です。
保険会社も,交通事故紛争処理センターの和解案には同意することも多く,仮に和解案に保険会社が同意しない場合でも,審査会の裁定により損害賠償額が決定されると,保険会社はこの裁定結果に拘束されることになります。
裁判であれば,判決が出ても,加害者側が控訴することで,さらに期間を要することも多いです。
加害者やほけ会社が悪質で示談が進まない場合でも,損害額算定のための客観的資料が揃っているのであれば,交通事故紛争処理センターを利用するメリットは大きいと言えます。

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