2018.9.11 更新

交通事故の影響が怖い…事故後の仕事や就活への影響は大きい?

事故のダメージによる症状は人それぞれ

交通事故被害に遭い、骨折などの見た目にも大きな怪我を負われた方は、その原因が事故にあることがハッキリしています。
しかし、中には一見すると怪我が事故によるものかどうか判断しづらく、原因を特定しにくい症状がある方もいます。

それは、事故による外傷後に外傷の程度と釣り合わないような激しい痛みが慢性化することで、「CRPS(複合性局所疼痛症候群)」と呼ばれています。
CRPSにはさまざまな症状があり、灼熱(しゃくねつ)痛、むくみ、皮膚の色の変化(発赤、蒼白)、骨の萎縮などがあります。
この症状の発生原因や治療法はいまだ解明されておらず、事故受傷後、このような症状が続くときはCRPSの可能性があります。

そのほか、事故による頸椎捻挫後、継続的にめまいや吐き気、耳鳴りなどの症状が出ることがあり、これは「バレー・ルー症候群」と呼ばれています。
こちらも発生原因については不明な点が多く、ストレスの影響が大きいことも指摘されています。

また事故時の恐怖体験によりPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したり、事故後のストレスからうつ病を発症することなどもあり、これらの精神的症状も事故のダメージによるものです。

このように、事故で重傷を負ったわけではないように見えても、実は慢性的な痛みやめまいなどの症状が続く日々を送っていて苦しんでいる方も多く見られるのです。

事故直後に自覚症状がない場合

事故に遭った直後は通常、興奮状態にあり、体内ではアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンが大量に分泌されると痛みを感じる感覚器官も麻痺し、痛みを感じないこともあります。
また、むち打ち症の場合、事故直後には痛みがなくても、翌日や数日後に痛みが発生し、持続するという経過をたどることがよくあります。

つまり、事故直後にはなかった症状が時間の経過とともに出てくることは多いです。
特にむち打ち症で症状が慢性化するような事例では、その原因がハッキリとは分からないケースが多く、前述したCRPSやバレー・ルー症候群などの症状が、時間の経過とともに発生することもあります。

病院に早く行くべき理由とは?

交通事故に遭ってしまったら、痛みの有無にかかわらず、すぐに病院に行くことが大切です。
事故から時間が経過してしまうと、今起きている症状が事故によるものなのか、その他の原因によるものなのかが分からなくなってしまいます。
交通事故被害者としては、事故後に体調が悪化していることから、当然、事故が原因と考えていたとしても、示談交渉時に、事故から受診までに期間が開いていることを理由に、保険会社が事故と症状との因果関係を否定することも想定されます。

繰り返しになってしまいますが、事故直後には出ていなかった症状がのちのち発症し、慢性化するようなことも決して稀(まれ)ではありません。
そのような事態を防ぐためにも、事故直後に病院に行っておくことで、どのような事故で、どのようなケガを負ったのかということを明確にしておくことができます。それがのちに発症する可能性のある症状との因果関係を証明することが可能となるのです。

いずれにしても、事故直後に病院に行くことで症状の原因を明らかにし、適切な治療を受けることが、ケガの早期回復につながるので、早めの受診を強くお勧めします。

受診方法と費用について

交通事故に遭った場合に整骨院などで治療を受ける方もおられますが、まずは病院で受診することが必要です。整骨院での治療では、医師の指示や同意がなければ、保険会社はその治療費の支払いを拒むこともあります。
受診する病院はMRIやCT検査などに対応しているところが望ましいですが、まずは通いやすい整形外科に受診し、ケガの内容によって必要であれば、他科や他の病院の紹介を受けると良いでしょう。

交通事故によるケガの治療費は本来加害者が負担すべきものですので、加害者が任意保険に入っていれば、加害者側の保険会社から支払いを受けることができます。
しかし、事故の発生原因について被害者側に大きな過失がある場合(飛び出しなど)には、加害者側の保険会社が治療費の負担をしない場合もあります。
その場合にはご自身が契約している自動車保険に人身傷害補償特約が付いていれば、自身の過失の有無にかかわらず、自らが加入している保険会社が直接治療費を支払うことも可能です。

事故の相手が任意保険に入っていない場合には、残念ながら治療費はご自身で支払う必要があります。
支払った治療費は相手の自賠責保険から後日受け取ることができますが、自賠責保険は症状固定までの損害については120万円が上限となっているので注意が必要です。

交通事故の治療では自由診療とすることが多いですが、相手が任意保険に入っていない場合や、自らにも大きな過失が認められる場合には、健康保険を利用した治療を受ける方が、のちのち受け取れる損害賠償額が大きくなることもあります。

早めの診察が因果関係の証明に

先述した通り、事故直後に病院を受診していないと、事故とケガとの因果関係が否定される可能性があります。
事故直後に受診することで、カルテに事故状況、ケガをした箇所、打った部位などを記載するので、事故直後にはなかった症状がのちに出てきた場合でも、その因果関係を証明しやすくなるのです。

例えば、事故直後に頸部(けいぶ)や腰部に軽い痛みがあったものの、自然に治るだろうと自己判断して病院に行かなかった場合で、1週間後に悪化して病院を受診したとします。
腰痛や首や肩にかかる痛みというのは、事故に遭わなくても、うっかりひねってしまったり、寝違えたりということでも起こり得るものです。あるいは特定の原因がなくても、元々ひどい肩こりや腰痛持ちである人は多くいます。
ですから、事故から時間が経過してしまうと、それが事故による症状なのか、それ以外の原因によるものなのかの判断がつけにくくなってしまうのです。
いくら自分で事故前に症状がなく、事故によるものだと主張したとしても、保険会社がそれを認めるとは限りません。

事故による症状ならば、「何故、すぐに病院に行かなかったのか」と言われてしまいます。仮に軽度の痛みであっても、必ず事故直後に病院を受診し、腰椎捻挫(ようついねんざ)や頸椎捻挫(けいついねんざ)というような診断を早期にしてもらうことで、のちに悪化してしまったときにも、因果関係を否定されにくくなります。
つまりケガの大小にかかわらず、早期に受診し、カルテにその記録を残しておくことがとても重要なのです。

受診が早いと慰謝料にもメリットがある?

入通院慰謝料は、入通院期間を基準として計算します。
裁判基準では、通院6か月であれば116万円(むち打ち症で他覚所見がない場合は89万円)となります。
ただし、実通院日数が少ない場合は、実通院日数を3.5倍(むち打ち症で他覚所見がない場合は3倍)した日数を入通院慰謝料算定の基礎とします。
週に2~3回程度通院していれば、概ね通院期間が入通院慰謝料の計算の基礎となることになります。
このように、通院日数と通院期間が多ければ多いほど、慰謝料の金額も上がることになるので、この点からも早期に受診した方が良いとハッキリ言えるでしょう。

通院頻度は医師と相談の上で決まることと思いますが、可能な限りリハビリを受けるなどして通院をすることでケガの回復にもつながりますし、慰謝料の金額も高くなるというメリットもあります。
総合的に判断して、早期に治療を開始し、その後の治療にも積極的に取り込むことが非常に大切だと言えます。

早期診察が後遺障害認定に影響?

欠損障害(指の切断)、機能障害(関節可動域の制限)など、他覚所見がある場合には、問題なく後遺障害認定されることが多いです。
しかし、むち打ちや腰椎捻挫などの場合には、加齢による脊髄の変化などもあり、MRIやCTなどの画像所見でその症状を裏付けることができないことが一般的です。
それでは他覚所見で裏付けられない症状は、後遺障害として認められないということかというと、そうではありません。
むち打ちや腰椎捻挫で、後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」と認定されることはよくあります。

後遺障害の認定にあたっては、受傷部位とその症状との間に矛盾はないか、症状は一貫しているか、どのような治療経過をたどったかなどが重要視されます。
事故直後には症状が軽度であっても、その後、増悪することはよくあることで、不自然なことではありません。
まずは事故直後に受診し、事故内容と受傷部位をカルテに記載してもらうことで、その後の症状の悪化や慢性化の原因を明らかにすることができます。
早期に診察を受けることで、その後も継続的に治療を受けることになり、症状の推移や治療経過もカルテに証拠として残ります。

このように、事故直後から、その受傷経緯や症状の推移、治療経過をカルテに残すことで、後遺障害と認定されることにつながります。
後遺障害はカルテなど病院の記録から認定されるものであり、そのカルテに記載がなければ、当然、考慮されることもありません。
ですので、事故直後から症状の推移を証拠として残し、後遺障害として認定してもらうためにも、早期に受診することが大切です。

後遺障害認定と他覚症状

後遺障害の認定は保険金支払い手続きの一環であり、公正な認定が必要です。客観的な裏付けのない自覚症状のみで後遺障害が認定されることはありません。
各種検査結果やMRI画像など、症状を裏付ける客観的なものを「他覚所見」と言い、後遺障害の認定にあたっては重要視されるポイントとなります。

欠損障害(指の切断など)や画像所見から原因が裏付けられる関節可動域制限などは、他覚所見がハッキリしています。
しかし、むち打ち症や腰椎捻挫などは、画像所見からは原因を明らかにすることが難しいケースが多いです。
そのような場合でも、筋力や握力の低下、各種神経学的検査結果などから、症状を裏付けられる他覚所見が得られるケースもあります。

医師は治療の専門家ですが、後遺障害認定手続の専門家ではありません。
後遺障害診断書に、医師が詳しく他覚所見を記載することで、後遺障害認定につながります。
その後、弁護士が後遺障害診断書の記載内容に不備がないか、追加で検査をおこなったりもしながら、後遺障害認定につながるかどうかということを法律の専門家として、医師とは違った目線で、他覚所見について検討し、助言することができます。
つまり、弁護士が医師と相談し、追加検査を行うことで、他覚所見を得ることができ、後遺障害認定につながる事例もあるということです。

示談後に後遺症があらわれた場合

示談書を交わすということは、「これにより全てを解決し、示談で決められた内容以外について、お互いに何らの権利義務はない」ということを確認することを意味します。
ですので、原則として示談を締結したあとは、示談で決められたもの以外の請求をすることはできません。
しかし、示談締結後に、交通事故による後遺障害が発症してしまった場合に、その後遺障害にかかわる損害について、一切補償を受けられないというのでは、被害者にとってあまりにも酷な結果となります。

この問題について最高裁は「交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に、小額の賠償金をもつて示談がされた場合に、示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた後遺症等について被害者は、後日その損害の賠償を請求することができる。」という判断を示しています。
この最高裁判例を根拠に、示談締結時にはわからなかった後遺障害が後日あらわれた場合には、さらにその後遺障害についての損害を請求することが可能です。

また、後遺障害が認められず、異議申し立てをしている際、経済的理由により、後遺障害を除いた部分だけでも、示談を締結し、早く支払いを受けたいということもよくあります。
そのような場合には、示談書に「後遺障害については別途協議する。」というような文言を入れておくことで、まずは後遺障害を除いた示談であることを明記しておくと良いでしょう。

初期に自覚症状がなければ安心?

事故直後に自覚症状がなくても、時間の経過により、症状が悪化することは珍しいことではありません。
特にむち打ちや腰椎捻挫などの場合、初期にはほとんど症状がなく、のちにしびれや激しい痛みなどが出てきて慢性化することはよくあります。
CRSPやバレー・ルー症候群のように、その原因や治療方法が解明されていない症状に発展することもあります。
軽傷だと勝手に自己判断して、治療を受けずに悪化してから受診しても、交通事故による症状だとは認めてもらえず、正当な補償を受けられない可能性があります。
保険会社から事故との因果関係を否定されることで、大きなストレスが生じ、それが病状を悪化させることもあり得ます。
むち打ち症の慢性化はストレスも大きな要因であることが指摘されているからです。

どのような病気でも、早期に治療を開始することが回復につながりますし、きちんと補償を受けるためにも、絶対に自分で判断せずに、病院に受診することが何よりも大切です。

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