2017.9.29 更新

後遺障害が非該当になる理由って?認定のために被害者がするべきこと

事故後の痛みが残存していても後遺障害認定が非該当になる理由

交通事故で頸椎捻挫等のいわゆるむち打ちの傷害を負い、時間が経ってもなかなか痛みが取れないということは珍しくありません。最近は、痛み自体が残っていても受傷から3か月から6か月程度が経過した時点で症状固定の診断を受けるのが一般ですが、その場合にはまだ痛みが残っている状態で後遺障害の等級認定を受けることになります。
しかし、この等級認定の段階で、最下級の等級である14級の認定を受けることができず非該当となるケースがしばしば見られます。被害者本人からすると、まだ痛みが残っているにもかかわらず非該当となるのは納得できないのは当然ですが、実際には大変よく見られるケースです。では、痛みが残存しているにもかかわらず非該当とされてしまうのはどのようなケースなのでしょうか?
まず、いわゆる他覚的所見が見られないケースはこのようなことになりがちです。詳しくは次に説明しますが、レントゲンによる画像診断など、本人以外の人が認識できる形で症状を確認することができない場合が他覚的所見がない場合です。
次に、実通院日数が少ないことも非該当とされる一因になります。通院の回数が少ないということで症状も重くないと評価されてしまうことがあり得るということです。
さらに、被害者本人の自覚症状がカルテなどに適切に反映されていない場合も非該当とされる一因となります。本人がどのような痛みを感じているかはカルテなどの記載でしかわかりませんから、そこに適切な記載がなされていなければ痛みの残存が認定に反映されないのは当然のことです。

他覚的所見がないとはどういう意味?

むち打ちなどのような、傷害を受けた部位を外から見ても症状を確認することができないタイプの傷病では、さまざまな検査を行うことによって症状の有無や程度を客観的に確認することになります。
具体的には、レントゲン、CT、MRIなどの画像による診断や、腱反射、握力テスト、スパーリングテスト、ジャクソンテストなどが診断のためによく行われるものですが、本人が痛みなどの症状を訴えていても、これらの検査で異常が見られない場合、「他覚的所見がない」という言い方をすることがあります。
被害者本人が感じている痛み、しびれや違和感などは、本人のみが感知できるもの(自覚症状)で、医師を含む他人はこれを直接感知することはできません。医師が感知できないと、本当に症状が存在するのかどうかもわかりません。
そのため、先ほど挙げたような検査を行って客観的に症状の有無を感知しようとするわけですが、それらの検査の結果異常が見られない場合には、症状に関する本人の訴えを客観的に確認することができない状態になります。これが「他覚的所見がない」と言われる状態です。
むち打ちなどの場合には、実際に痛みなどの症状があっても検査に異常が見られないことはしばしばありますので、他覚的所見がないからといって後遺障害が認められないわけではありませんが、他覚的所見がない場合(特に画像診断による所見)には非該当とされやすいのが実態です。

事故の規模や衝撃が小さいと後遺障害認定が非該当になる可能性が高くなる

そもそも後遺障害等級認定において非該当とされやすいのは、むち打ちを代表とする神経症状です。これらは症状を客観的に認識することが難しいため、さまざまな検査を行って症状を確認することになりますが、検査に異常が見られないことも珍しくないために後遺障害の残存を判断するのが難しく、本人の自覚症状以外に客観的に症状が確認できない場合には非該当とされやすいのです。
しかし、等級認定の場面ではさまざまな要素が認定に当たっての考慮の対象となります。事故後の経過、残存している症状など以外にも、事故の状況などもその後の症状を認定する一つの要素となりますので、事故の規模や衝撃の程度なども認定に当たっての考慮要素の一つになります。
事故の規模が大きい、事故時に受けた衝撃が大きいなどの事故状況は当然その後の症状にも大きな影響を与えることになりますので、これらが大きいほど残存する症状も重いことが推認され、等級認定を肯定する方向に作用する要素となることになります。
逆に、事故の規模や衝撃が小さい場合には、それによって残存する症状の軽いものと推認されやすくなりますので、等級認定を否定する方向の要素となり得ることにはなります。
ただ、むち打ちの場合には、程度の軽い事故であっても症状が長く残ってしまうことはままあることですので、事故の規模や衝撃などは認定において絶対的な要素ではありません。

軽度の自覚症状だと後遺障害の認定がどのように不利になるの?

むち打ちなどでは他覚的所見がないことが多く、症状を確認すること自体が難しいことはすでに説明しましたが、その場合には本人の痛みなどに関する自覚症状がどの程度かが等級認定において重要な要素になります。
他覚的所見が見られる場合は別として、それが見られない場合には、この自覚症状が軽いものであるとやはり等級認定においてはそれが不利に働くことは事実です。他覚的所見がなければ、自覚症状に基づいて症状の有無や程度を確認することになりますから、その自覚症状自体が軽いものであれば症状は軽いものと見られてしまい、残存した後遺障害の有無や程度もそれに応じた低い程度のものとの認定につながりがちです。
ただ、むち打ちの症状は、強い痛みやしびれなどが続くものばかりではなく、強くはないもののしつこい痛みやしびれ、違和感などが長く続くものもあります。被害者本人からすれば、これが毎日のように続くことは大変負担になるものであることは間違いありません。
痛み自体は強いものではないなど自覚症状が軽いものであっても、これが長くしつこく続いている状況を受診の都度医師にきちんと説明し、カルテにこれらの症状の記載がされるよう気を配っておく必要があります。

診断の難しい自覚症状で後遺障害をきちんと認めてもらうための方法

被害者本人が感じている痛みなどの自覚症状は他人が感得できるものではありません。相手が専門家である医師であっても同じです。したがって、自分の感じている痛みなどの自覚症状は、被害者本人が自ら伝えなければ医師も認識することはできません。
後遺障害認定に当たっては、自覚症状の内容・程度などは医師が作成した診断書やカルテなどの記載によって認定することになります。被害者が医師に自覚症状の内容・程度を伝え、医師がカルテなどにこれを記載するという手順で自覚症状に関する資料は作られていくことになりますので、受診の際にはその時点で自分が感じている症状を医師に詳細に伝えることが重要なことになります。
毎回受診の度に同じような内容の自覚症状を医師に伝えるのはしつこく感じられてしまうのではないか、そう感じられたら恥ずかしいなどと考える人もいるかもしれませんが、医師の立場からすれば、治療によりどのような成果が上がっているかを確認するためにはその時点での患者の症状や前回受診時からの症状の変化の有無を正確に把握することは必要なことですので、そのように考える必要はまったくありません。
むしろ、自覚症状について話をしなければカルテにも自覚症状に関する記載がされないことになり、等級認定の際に、症状がなかった、あるいは軽かったものとされるおそれがありますので、受診の都度自覚症状を詳しく医師に伝えることはとても重要なことです。

病院での治療を着実に受けるか否かで後遺障害の認定に影響する

交通事故に遭って怪我をしたものの、忙しくて病院に通う時間が取れず、通院の回数が少ない状態で等級認定を受けるケースがあります。また、我慢できないほどの痛みではない、わざわざ通院して薬をもらってもさほど効かないなどの理由で他の予定を優先して通院が少なくなってしまうケースもあります。真面目な人ほど、痛みなどを我慢した結果このようなことになりがちな傾向があるようです。
通院の回数が後遺障害の有無や程度に直接つながるわけではありませんが、認定側の考え方からすると、通院の回数や頻度が少ないということはそれだけ症状も重くないのだ、という評価をされることにつながりかねません。仕事が忙しいなどのやむを得ない理由で痛いのに我慢を重ねて通院回数が減った結果、等級認定でも不利な認定をされるのでは、我慢をしたことが逆に自分のためにならないことになってしまいます。
適切な賠償を受けることを考えれば、仕事が忙しかったり面倒に感じたりしても、定期的に通院をして着実な治療を受けることが重要です。

後遺障害認定が非該当になりやすい診断書の内容の具体例

後遺障害認定においては、医師の作成した診断書は重要な資料の一つとなります。したがって、その内容が適切なものかは認定に大きな影響を与えることになります。
後遺障害認定を行う際には、定型の書式の後遺障害診断書に主治医が記載を行います。この後遺障害診断書の作成に慣れている医師であれば、適切な後遺障害認定を受けるのに必要な内容の記載をしてもらうことができますが、すべての医師が後遺障害診断書の作成に慣れているわけではありません。中には、後遺障害が残存しているからこそ等級認定を行おうとしているにもかかわらず、症状が残存していないかのような内容の診断書が作成されてしまう例も見られます。そのような診断書では非該当とされてしまう可能性が高くなります。
かといって、診断書は医学的見地から専門家である医師が作成するものですので、患者側がその記載内容を逐一指示できるものでもありません。そこで、診断書を作成してもらう際に被害者本人が注意すべき点と幾つか挙げておきます。逆にこれらの点に問題のある診断書は非該当になりやすい診断書ということができるでしょう。
(1)自覚症状を詳細・明確に伝えること
自覚症状はあくまで本人が感じていることですから、本人からの申告がなければ医師が正確に記載することはできません。特に他覚的所見のないケースでは症状固定時の自覚症状は大変重要な要素になりますので、診断書作成の際には医師にあらためて症状を詳細かつ明確に伝えるようにしましょう。
(2)具体的な記載がされているかを確認すること
診断書によっては、定型の書式の記載事項を埋めているだけの形式的な記載しかなされていないものが見受けられます。診断書の内容が具体的であればあるほど認定を受けやすくなりますので、あまりに簡潔・形式的な記載しかされていない場合には補足を求めることも考えましょう。
(3)記載漏れがないかを確認すること
定型の診断書の項目に記載漏れがある診断書もあります。当然認定に支障が生じますので、補充してもらう必要があります。
(4)場合によっては、弁護士にあらかじめ相談して記載内容について医師と面談してもらうこと
例えば、医師から後遺障害診断書の作成経験がない、乏しいなどの話が出た場合や、診断書作成を渋る場合などには、交通事故に詳しい弁護士に相談して医師と面談してもらった上で診断書を作成してもらうことが役に立ちます。弁護士から医師に認定に役立つ記載内容を間接的に示唆してもらうことができますので、認定に有利な診断書ができる可能性が高まります。

後遺障害認定のために医者に話すべき適切な症状説明の方法

専門家である医師に対して自分から症状を説明することはハードルが高いと感ずる人も多いでしょう。しかし、少なくとも自覚症状については患者自身が説明しない限りは医師が正確に理解することは不可能です。そこで、医師に自分の症状を説明する際のポイントを挙げておきます。
(1)説明はできるだけ具体的にする
日々痛みに悩まされているときに、「毎日痛いのです」と説明することは簡単ですし、実際に医師と症状の話をするときにもその程度の伝え方をしていることが多いと思います。しかし、ここはもう一歩踏み込んで具体的に説明をするように心がけましょう。
身体のどこが(例:背中が)、どのようなときに(例:起床後、特に雨の日にはひどい、仕事を終えて帰宅したときには必ず、など)どのような頻度で(例:3日に2日程度の割合で)、どの程度継続して(例:痛み出すと1時間くらい)など、痛む場面を思い起こして具体的な説明をするようにしましょう。医師によっては場面を分けて具体的に聞いてくれる人もいるかもしれませんが、多くの医師は時間に追われて診療に当たっていますので、こちらから気を付けないと抽象的に「痛い」というだけで終わってしまうことが多いので、こちらから積極的に伝えるようにすべきです。
(2)症状に変化があれば積極的に伝える
ある程度通院が続くと、治療に慣れてしまい、毎回同じような症状を同じように伝えることになりがちです。通院の間には日によって症状が変化することがありますが、いざ病院に行った際にはそのことを忘れてしまい、同じ内容の話をして帰ってくるということになりがちです。そのような受診の結果作成されるカルテは毎回同じような内容のものになり、具体性に欠けるものになってしまいます。日々の症状の変化は患者本人にしかわかりませんから、意識して医師に伝えるようにしましょう。具体的で変化に富んだ内容のカルテは認定の際にとても役立つはずです。
(3)症状に関するメモを取っておく
先ほども述べたとおり、毎日通院しているわけではない場合には、通院と通院との間に起きたことを医師に伝えることを忘れがちです。大げさなものを作る必要はありませんが、日々症状について気付いたことを記載するメモ帳(スマートフォンのメモ機能などでも十分でしょう)を作っておいて気付いた都度記載しておくことが役に立ちます。

弁護士への依頼で後遺障害の認定はどのように影響されるのか

交通事故で弁護士に依頼するのは加害者側との損害賠償の交渉がうまく行かなくなった時点でよいと考えている人も多いと思いますが、後遺障害等級認定の結果は損害賠償額に大変大きな影響を及ぼすものですので、等級認定の段階から弁護士に相談することは賠償の結果に有利に働きます。
弁護士からのアドバイスが役立つ場面としては次のようなものがあります。
(1)通院中のアドバイス
通院中に医師に自分の症状をどのように伝えるべきかについて、症状に応じたアドバイスを受けながら通院をすれば、カルテに記載される内容をある程度コントロールすることができます。カルテの記載は後から追記・訂正してもらうことは困難ですから、通院中から適切な内容になるよう気を配る必要があり、弁護士のアドバイスを受けることはその役に立ちます。
(2)症状固定時の判断
通院を漫然と続けていると、あっという間に日が経って行きます。むち打ちのケースでは、最近は通院から3か月から6か月程度で保険会社から治療費をストップすると言われることが多く、その時期を目安に症状固定の診断を受けて後遺障害等級認定に進むかを判断することになります。
医師側から症状固定の診断をすることを積極的に勧められることは多くはありませんし、症状固定後に治療が不要になるわけではなく症状固定はあくまで法律的な概念ですので、その時期をいつにするかは法律の専門家である弁護士とも相談して行うべきです。
(3)後遺障害診断書の作成
医師に後遺障害診断書の作成をしてもらう際に、症状に応じた適切な内容のものとなるよう弁護士のアドバイスを受けると、等級認定が受けやすい診断書を作成しやすくなります。後遺障害診断書の内容は等級認定の成否を左右する重要なものですので、いったん弁護士の目を通した診断書を利用することは大変役に立ちます。
(4)認定に対する異議
等級認定の結果に不服がある場合には異議の申し立てができますが、漫然と異議を申し立てても結果は変わりません。不足する資料を追加したり具体化したりする作業を行って初めて異議は認められます。そのような作業は弁護士の得意とすることです。

後遺障害が認定される可能性を高くするために事故後からとるべき行動

交通事故の被害に遭ったことは残念なことですが、被害を受けてしまった以上は適切な賠償を受けて被害を補てんすることが大事です。そのために、事故後から被害者側も後の賠償請求に向けた行動をする必要があります。まず、通院する病院を選択できるのであれば、なるべく受けた傷害を扱い慣れた病院を選択しましょう。交通事故での受傷の治療、特にむち打ちについては、後の法的な処理を考えた治療を行っていく必要がありますし、後遺障害診断書の内容も作成する医師によってどうしても出来不出来があります。
次に、治療中はすでに述べたことを参考に、自分の症状を積極的かつ具体的に医師に伝達することが重要です。通院は治療のために行うもので、賠償のために行うものではないのも確かですが、治療中の経過(特にそれが記載されたカルテ)は後の賠償の成否を左右しますので、通院段階から賠償のことを考えながら行う必要があります。また、医師と話をする際には、いずれは事故の賠償交渉の段階に進むことをそれとなく意識させる必要があります。医師の中には賠償のことは自分は関係がないと考える人が多いようですが、現実には医師の治療経過・内容が賠償問題の解決に大きな影響を与えますから、賠償段階での協力をスムーズに得られるよう良好な関係を築いておく必要があります。
なお、場合によっては通院する病院を変更した方がよいケースもあります。本来は通院する病院は変えない方が理想ですが、医師の治療方針に納得できない場合にはなるべく早い段階で病院を変更しましょう。治療が終わる間近で主治医を変えるのはあまりいいことではありませんので、変えるのであれば早めに判断すべきです。
さらに、当然のことですが、事故に起因する出費(ほとんどは治療費関係でしょうが)の証拠となる書類(領収書など)は保管しておく必要があります。
最後に、依頼するかどうかにかかわらず、事故に遭った場合にはなるべく早い段階で一度弁護士に相談しておきましょう。必ず役に立つアドバイスを受けることができるはずです。また、弁護士に依頼する場合に備えて、自分や家族の加入する自動車保険などの損害保険に弁護士特約が付いていないかを確認しておきましょう。自分名義の保険ではなくても同居の家族の保険でカバーできることもあります。

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