2019.7.30 更新
交通事故の慰謝料が少ない気がする…今すぐ確認すべき10項目
「適切な金額かどうか知りたい」
目次
慰謝料の種類と相場の現状
交通事故における慰謝料は、治療期間に応じた入通院慰謝料と後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料があります。
慰謝料の計算方法には裁判(弁護士)基準、自賠責基準、任意保険基準があり金額が大きく異なります。
例えば入院1か月,通院6か月の場合の入通院慰謝料はどれくらい差があるのでしょうか。
裁判基準での入通院慰謝料は149万円となります。
これに対し自賠責保険における入通院慰謝料は
・【入院期間+通院期間】
・【(入院日数+実通院日数)×2】
上記2つのいずれか小さいほうに4200円をかけた金額になります。
入院1か月(30日),通院6か月(180日)とすれば,210日×4200円=88万2000円となります。
実通院日数が少なければ、金額はもっと少なくなります。
任意保険会社も自賠責基準と大差はありません。
また、後遺障害慰謝料は後遺障害等級に応じて決まります。
自賠責基準の後遺障害慰謝料相場 | |
---|---|
●1級 | 1100万円 (常に介護を要するものと認定された場合は1600万円) |
●2級 | 958万円 (随時介護を要するものと認定された場合は1163万円) |
●3級 | 829万円 |
●4級 | 712万円 |
●5級 | 599万円 |
●6級 | 498万円 |
●7級 | 409万円 |
●8級 | 324万円 |
●9級 | 245万円 |
●10級 | 187万円 |
●11級 | 135万円 |
●12級 | 93万円 |
●13級 | 57万円 |
●14級 | 32万円 |
弁護士が介入していないケースで任意保険会社が後遺障害慰謝料を提示する場合、自賠責基準に近い金額を提示することが多いようです。
裁判基準の後遺障害慰謝料相場 | |
---|---|
●1級 | 2800万円 |
●2級 | 2370万円 |
●3級 | 1990万円 |
●4級 | 1670万円 |
●5級 | 1400万円 |
●6級 | 1180万円 |
●7級 | 1000万円 |
●8級 | 830万円 |
●9級 | 690万円 |
●10級 | 550万円 |
●11級 | 420万円 |
●12級 | 290万円 |
●13級 | 180万円 |
●14級 | 110万円 |
弁護士に依頼すると保険会社も裁判基準での後遺障害慰謝料の支払いに応じることが多いです。
慰謝料の算定基準と計算方法の種類
上記で説明したように、慰謝料の算定基準は、自賠責基準、任意保険会社基準、裁判基準があります。
自賠責の基準では、入通院慰謝料は実通院日数を2倍した期間又は入通院期間のいずれか短い方に4200円かけた金額となります。
裁判基準では、日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されている入通院慰謝料の算定表を用いて計算することが多いです。
後遺障害慰謝料は、自賠責基準では法令により定められた金額であり、裁判基準では積み重ねられた裁判例から形成された相場があり、特別な計算方法により算出されるものではありません。
慰謝料請求の重要なポイントと行動
入通院慰謝料は、入通院期間に応じて決まります。
しかし、単純に治療開始から治療終了までの期間のみから計算するものではなく、通院頻度が重要なポイントとなります。
自賠責基準では、入通院期間か実通院日数の2倍のいずれか短い方に4200円をかけた金額で計算するので、通院実日数が少なければ少ないほど入通院慰謝料の金額は低くなります。
赤い本の基準でも、通院期間が長い場合には、実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがあります。
すなわち、週2回の頻度での通院を継続すると、実際の通院期間と慰謝料算定のための通院期間は同じものになり、週2回未満の通院では、実際の通院期間よりも短い期間を慰謝料算定の基礎とすることになります。
通院頻度は医師の指示・指導によることになりますが、必要とされる限り面倒がらずに治療やリハビリを受けることが重要です。
また、通院頻度は後遺障害の認定にも影響を与えることがあります。
頸椎捻挫、腰椎捻挫など自覚症状が主で、レントゲン・CT・MRIなどの画像所見で症状が裏付けられないような場合でも、「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級14級9号に認定される可能性があります。
14級に認定されると自賠責基準で32万円、裁判基準で110万円の後遺障害慰謝料が認められます。
局部の神経症状として後遺障害が認定されるためには、症状が一貫していることや治療経過が重視されます。
医師が必要と判断し、週2回以上の頻度で通院し、カルテに症状の一貫性が記載されているような場合には後遺障害として認定されやすくなります。
後遺障害として認定され後遺障害慰謝料を請求するためにも、週2回程度、治療やリハビリに通うことが望ましいといえます。
弁護士に依頼するメリットとは?
入通院慰謝料や後遺障害慰謝料は保険会社基準よりも裁判基準のほうがいずれも高額になります。
「赤い本」は公刊されていますし、インターネット上でも裁判基準の慰謝料の情報は多く掲載されています。
このような情報をもとに、一般の方でも裁判基準での慰謝料額の計算は可能です。
しかし、一般の方が裁判基準での慰謝料を請求したとしても、示談交渉においては保険会社は裁判基準での慰謝料の支払いに応じることはほとんどありません。
訴訟で慰謝料を請求すると裁判基準での慰謝料が認定されることになりますが、一般の方が自ら裁判を起こすことは多大な労力がかかり、困難なことが多いと思います。
裁判を起こせば裁判基準での慰謝料が認められるので、弁護士が入った場合、保険会社も示談段階で裁判基準での慰謝料の支払いに応じることは多いです。
慰謝料以外の部分で保険会社との間で争点がないのであれば、適正な慰謝料での早期解決が可能であり、弁護士に依頼するメリットは大きいです。
慰謝料減額の条件とは?
損害賠償額の一般的な減額要素としては過失相殺があります。
事故発生について、加害者が100%責任がある場合は減額されることはありませんが、被害者にも過失がある場合にはその分減額されます。
例えば慰謝料が100万円の場合で被害者にも30%の過失がある場合、100万円から30%減額され70万円となります。
自賠責保険の場合には過失相殺はありません。
しかし、被害者に70%を超える重大な過失がある場合には減額されます。
入通院慰謝料については、70%以上の過失があれば20%減額されることになります。
後遺障害慰謝料については、70%以上80%未満の過失で20%減額、80%以上90%未満の過失で30%、90%以上100%未満の過失で50%減額されます。
その他の減額理由としては、通院頻度がすくないために慰謝料が低くなることもあります。
裁判基準の入通院慰謝料についても、通院頻度が少ない場合には慰謝料算定の基礎となる入通院期間について、実通院日数の3.5倍として計算することがあります。
つまり、週2回未満の通院頻度では治療開始から治療終了までの期間ではなく、実通院日数の3.5倍の方が期間が短くなるため、入通院慰謝料も低くなります。
このように通院頻度が少ない場合には、入通院慰謝料が低くなる原因となり後遺障害認定についても不利になることがあります。
慰謝料増額の具体的な方法
入通院慰謝料をしっかりと受け取るためには、医師の指示・指導のもとしっかりと治療・リハビリを受ける必要があります。
子供が幼い場合や仕事の都合など、被害者の特別な事情で入院期間を短縮したような場合には慰謝料の増額理由となり得ます。
また、重症の場合にも入通院慰謝料の増額理由となります。
後遺障害慰謝料を増額するためには、症状に応じた後遺障害等級が認定されることが重要です。
そのためには、後遺障害診断書に症状を裏付ける検査結果がしっかりと記載されているか、後遺障害診断書を踏まえた適正な後遺障害等級が認定されているかを確認する必要があります。
自賠責の後遺障害等級認定は絶対的なものではなく、異議申し立てを行うことにより非該当とされたものが後遺障害として認定されたり、より上位の等級に認定されることも多々あります。
後遺障害非該当から14級に認定されることで、後遺障害慰謝料110万円が認められます。
また、14級の認定から異議申し立ての結果12級に認定されると後遺障害慰謝料は290万円となります。
後遺障害慰謝料を増額するためには、症状に応じた適切な後遺障害等級が認定されることが重要です。
慰謝料を受け取るタイミング
慰謝料は入通院慰謝料と後遺障害慰謝料に分かれます。
入通院慰謝料は治療期間に応じて算定され、後遺障害慰謝料は治療終了後に後遺障害認定手続を経て後遺障害等級が認定されることにより、等級に応じて慰謝料の額が決まります。
このように慰謝料は治療終了後に算定することになります。
入通院慰謝料は後遺障害の認定を待たずに計算することは可能ですが、通常は後遺障害の認定手続が終了してから、まとめて示談することが多いです。
もっとも、後遺障害の認定手続は短くても1か月程度の期間を要し、認定結果が出たとしても認定内容に不満があり異議申し立てを行う場合には、さらに時間がかかります。
そのような場合、後遺障害に基づく損害(後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益)については、後遺障害が認定されたのちに別途協議することとして後遺障害以外の損害(休業損害,入通院慰謝料など)について先行して示談を締結し、慰謝料を受け取ることも可能です。
むち打ちでも請求できる方法とは?
むち打ちの場合、後遺障害として12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」又は14級9号「局部に神経症状を残すもの」に認定される可能性があります。
もっとも、むち打ちは後遺障害として認定されにくい傾向があり、12級13号に認定されることはまれで14級9号どまりのことがほとんどです。
むち打ちで後遺障害として認定されるためには、症状の一貫性や治療経過が重要視されます。
カルテに症状が一貫して記載され、治療・リハビリが継続して行われている場合には14級9号に認定されやすくなります。
大事なことは、医師の指示・指導のもとしっかりと通院し、受診時には自らの症状を余すことなく医師に伝え、カルテに記載してもらうことです。
また後遺障害診断書には、むち打ちの症状を裏付ける複数の方法による検査結果を記載してもらうことも重要です。
これらのことを行うことで14級9号に認定され、後遺障害慰謝料を請求できる可能性が高まります。
仮に後遺障害として認定されなかった場合でも、治療期間に応じた入通院慰謝料は請求することができるので、いずれにしてもしっかりと通院することが重要です。
通院または入院日数と慰謝料の関係
むち打ちの場合、後遺障害として12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」又は14級9号「局部に神経症状を残すもの」に認定される可能性があります。
入通院慰謝料は治療期間に応じて算定されます。
自賠責基準では、通院期間か実通院日数を2倍した期間のいずれか短い方に4200円をかけた金額が入通院慰謝料の金額となります。
裁判基準では「赤い本」の算定表が利用されることが多いです。
入院1か月・通院3か月では115万円、入院2か月・通院6か月では181万円になります。
通院頻度が少ない場合には、実通院日数の3.5倍を入通院慰謝料の基礎となる通院期間の目安とすることが多いです。
むち打ち症で他覚所見がない場合には、その他の場合と比べて慰謝料の額は低くなります。
入院1か月・通院3か月で83万円、入院2か月・通院6か月で133万円になります。
通院頻度が少ない場合には、実通院日数の3倍が入通院慰謝料の基礎となる通院期間の目安となります。
このように入院・通院期間が長ければ長いほど慰謝料の金額は大きくなりますが,通院頻度も重要になります。
交通事故紛争処理センターと裁判所の活用
示談がまとまらない場合には、第三者機関を利用して解決を図ることになります。
一般的には裁判による解決を考える方が多いと思いますが、交通事故紛争処理センターを利用した解決方法もあります。
交通事故紛争処理センターは自動車事故による損害賠償の和解あっせん、審査業務を行います。
交通事故紛争処理センターには和解あっせん担当の弁護士がおり、被害者及び加害者側保険会社の各主張を聞き取り必要書類を確認したうえで和解案を提示します。
和解案は裁判基準に基づき算定されます。
被害者及び加害者側保険会社が和解案に同意すれば、和解が成立し保険金が支払われることになります。
和解が成立しない場合、審査会で審査が行われ裁定により結論が出されます。
申立人である被害者は裁定の結果に拘束されませんが、被害者が裁定に同意した場合には加害者側保険会社は裁定の結果に拘束され、保険金が支払われることになります。
被害者が裁定に同意しない場合には、交通事故紛争処理センターでの手続は終了し裁判で解決することになります。
なお、交通事故紛争処理センターの利用には加害者が任意保険に加入していることが必要であり、任意保険に加入していない場合には手続を利用することはできません。
交通事故紛争処理センターの利用は無料であり、公正な第三者である弁護士が和解案をあっせんするため、弁護士に依頼しなくても適正な基準での和解ができる可能性が高く、利用するメリットは大きいです。
交通事故紛争処理センターでは、過失割合に大きな争いがあるケースや認定された後遺障害等級よりも上位の等級による損害賠償を請求するような場合には、和解成立の可能性は少ないため裁判を行うことが妥当です。
裁判を起こせば、双方の主張や証拠に基づき裁判所が損害賠償額について判決を出すことになります。
もっとも、判決の前に主張・証拠が出そろった段階で裁判所が和解案を提示することも多く和解による解決も多いです。
このように保険会社との協議が整わない場合は,交通事故紛争処理センターや裁判所での手続で損害賠償を求めていくことになります。
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