2019.11.25 更新
交通事故示談とは?知らなきゃ損する!示談の流れや交渉時期、時効や弁護士へ依頼するタイミングなどを一挙解説!
不幸にも交通事故にあってしまうと、肉体的・精神的どちらにおいても大きな損害を受けることがほとんどです。例えばむちうちになった、骨折したなどの身体的症状や通院中仕事ができず収入が減ったという収入の問題、さらに毎日痛みで眠れなく苦しい思いをするという精神的苦痛など、さまざまな損害を被ってしまうのが交通事故です。
そんな交通事故にあった方々が行うものが「示談」です。当事者間で話し合い、円満に交通事故にまつわる問題を解決するためには必ず行ってほしいものです。
目次
交通事故の示談とは「責任の有無と損害賠償額」を裁判をせずに決めること
そもそも示談とは、「民事上の紛争を裁判によらず、当事者間の合意で解決すること。民法上の和解契約のこと」(『広辞苑 第六版』)です。
交通事故の示談においては、被害者・加害者のどちらが事故の責任を負っているのか(過失相殺)、治療費や慰謝料はいくら負担するのか(損害賠償額)をそれぞれ当事者間で話し合います。
事故の責任がどちらにあり、損害賠償はいくらになるのかを「裁判せずに」合意するべく行っていくのが交通事故の示談です。
もし交通事故にあった後示談を行わないと、「損害賠償請求権」が失われてしまいます。これは、いわゆる慰謝料や治療費など事故後に発生した各種費用や将来かかるであろう費用(介護費用など)を、相手方に請求できなくなるということです。
また、交通事故の加害者側が示談をしなかった場合、裁判に発展することがあります。
最悪の場合刑罰が発生しますし、加えて裁判で決定された慰謝料額に対しては利息がかかるので、結果として示談をするよりも高額な金額を支払うことになります。
このように、交通事故後示談を行わないことは当事者からすればデメリットの方が大きくなります。よってしっかりと示談を行う必要があります。
実際に決まる「事故の責任の有無」や「損害賠償金の金額」については、実際の事故の状況によって結果が変わってきます。示談で扱う内容について理解したうえで、示談に臨むとよいでしょう。
交通事故の被害者になったときの示談が成立するまでの流れ
ここからは実際に示談が成立するまでの実際の流れを、時系列に沿って説明していきます。
示談成立までは、大きく分けて5つのステップがあります。
示談のステップ①:事故直後はていねいに対応+警察に「人身事故」で届け出る
まずは交通事故直後、焦りなどもあるかと思いますがきちんと停車をして車を降り、事故の状況を確認して警察を呼びましょう。
注意として、必要以上に相手方に対して敵意を見せることはしないでおきましょう。相手方に不要な懸念を与えてしまうと、後々自分に跳ね返ってくるかもしれません。
このタイミングで、情報も得られるだけ得ておくのがいいでしょう。例えば、免許証を見せてもらったり、相手の車のナンバーを控えたり、事故現場の写真を撮ったりメモをとったりすることです。これが後々示談でもめる筆頭の、過失割合を決めるときなどに生きてきます。
その後、警察が来たらきちんと状況を伝えて実況見分をしてもらいます。終わり次第、自身の保険会社に「交通事故にあった」と連絡をしておきましょう。保険会社は連絡しないと基本的に動いてくれません。
また、交通事故はそのときケガや痛みがあまりなくても日を追うごとに痛みが大きくなったり、痛みが出たりします。そのため、事故の届け出は少しでも痛みがあれば「人身事故」で提出するのがよいでしょう。
「物損事故」として処理されると、身体の負傷に対する損害賠償責任が発生しなくなる=通院慰謝料などを受け取れなくなるからです。
示談のステップ②:「症状固定」まで通院を続ける
事故後はすぐに病院に行って、ケガが完治するか症状固定の診断をもらうまできちんと通院することが大切です。
特に身体に不調が出ていなくても、後日むちうちなどの症状が出てくることもあるので、必ず事故直後に1回は病院を受診しましょう。
症状固定とは聞きなれない言葉だと思いますが、「今後治療を続けてもこれ以上回復する見込みがない状態」のことを指します。いわゆる、「後遺症」「後遺障害」として認定されるには、この症状固定の診断が必要不可欠です。よって、症状固定の診断を医師から受けるまでは通院を続けられることが大事になります。
ときには、相手方保険会社が治療費支払いを打ち切ってくることがあります。この場合でも、途中で通院治療をやめる必要はありません。しっかりと治す、もしくは症状固定まで治療を続けることが大事です。
また、後々のために、傷病の診断書に「交通事故に起因するものである」という交通事故との因果関係がある傷病であることを医師に記載してもらいましょう。そうすれば示談締結の際、保険会社が支払わなかった治療費もしっかりと受け取れる可能性が高くなります。
ちなみに交通事故の場合、病院は第三者行為傷害として保険適用なしでの治療を求めることがありますが、健康保険や労災保険といった公的保険を利用した治療は可能です。
ただし、公的保険適用で治療を受けるときには「第三者行為による届け出」を行う必要があります。そしてこの場合でも上記と同じく、病院に行ったときに交通事故で負った負傷であるということを診断書に記載してもらいましょう。
示談のステップ③:症状固定以降~後遺障害認定~示談開始
治療を続けても症状がこれ以上軽減できないと医師に判断されたら、「症状固定」の診断が下ります。症状固定となると、「回復の見込みがない」ことから治療を続ける必要性はないと判断され、症状固定以降の治療費を保険会社から受け取ることができなくなります。
そしてこのタイミングで初めて、日常生活に支障をきたすような後遺症、いわゆる後遺障害の認定請求を行えるようになります。
後遺障害認定を受けることにより、残っている身体的損害が交通事故によるものだと認められ、示談の際に「後遺障害慰謝料」として、通院慰謝料とは別に請求することができるようになります。
後遺障害に認定される、されないでトータルの損害賠償金額が変わってくることを踏まえると、症状固定まで治療を続けるのが必須であるとするのがご理解いただけると思います。
よって負傷をした場合、しっかりと治療を続け「症状固定」の診断を受けること。そして、後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害認定申請を行い、認定・不認定の結果が出てから示談を開始するのがベターです。
ちなみに後遺障害認定がもし不認定であった場合は、異議申し立てを行うことができます。詳しくは後遺障害の異議申し立てをご覧ください。
以上を改めてまとめると、負傷が完治または症状固定の診断が下りて初めて示談交渉を開始できるようになる、ということです。
被害者が加害者に請求できる損害賠償金には、交通事故で負傷した際の入院費、治療費、通院にかかった交通費があります。そのため症状固定前までに示談を開始してしまうと、本来請求できるはずだった治療費や入通院費や後遺障害慰謝料が請求できなくなる可能性が出てきます。
示談交渉を開始するのは症状固定以降、で覚えておいてください。
示談のステップ④:保険会社との実際の示談交渉
ここまでくると、いよいよ相手方の保険会社との示談交渉に突入します。
実際に治療にかかったお金(入通院慰謝料、治療費)、仕事を休んだ場合には休職期間中の賃金(休業損害)、後遺症のせいで失われた将来得られるはずであった賃金(後遺障害逸失利益)、精神的苦痛への補償金などを相手に請求できます。
ここでポイントとなるのは、保険会社と交渉するときは冷静になり、感情的にならずに交渉を行うことです。怒りをぶつけても良い結果にはつながりませんし、むしろ印象が悪くなり、今後の交渉に響くことがあります。相手も人間なので誠意ある対応を行いましょう。
また、示談の内容や金額に不満がある場合は絶対に合意しないことです。というのも、一度示談に合意してしまうと、合意内容を変更することはまず無理です。そのため、安易に示談の合意をするのはやめましょう。
しかし、例えば示談金として提示された金額が妥当かわからないなど示談で争っている内容がよくわからず、自身の主張を正しく通せないというのはよくあることです。
その際には、法律のプロである弁護士に相談するのも一つの方法です。相手方の保険会社は、支払うお金をなるべく抑えようとするのが一般的だからです。弁護士であれば妥当かどうかを判断してくれます。
納得のいく内容で示談を締結するためにも、一度弁護士への相談をするのがよいでしょう。
示談のステップ⑤:示談締結
双方が納得のいく示談内容になったら、示談書に署名をして示談が成立となります。
一度署名と捺印をしたら、それ以上追加で慰謝料や損害賠償金を請求することは不可能となります。弁護士に相談して、金額に妥当性があるかどうかをしっかりと見極めたうえで合意することが大切です。
交通事故の示談で、実際に弁護士に相談するベストタイミングはいつ?
「弁護士に相談」とはいうけれど、実際にどんなタイミングで弁護士に相談すればいいのか?という疑問をもつかと思います。
実は交通事故の示談において、弁護士に相談するタイミングは一般的に早ければ早いほどよいとされています。
交通事故発生から示談締結までの中で、特に相談した方が良いタイミングが下記3つです。
- 事故発生直後
- 症状固定後、示談開始時
- 相手方保険会社が示談金を提示したとき
それぞれ順に解説していきます。
交通事故示談を弁護士に相談するタイミング①:事故発生直後
事故発生直後に相談した場合、示談交渉についての今後のおおまかな流れを把握することができるというメリットがあります。
またケガをした場合、どのような病院にかかるべきかやどの程度の頻度で通院すべきかなどが損害賠償金の判定の際の争点になります。
このような点について適切な対応をしていなければ、後で後遺障害の等級認定手続きをする際に不利になってしまう恐れもあります。
そこで、交通事故直後から弁護士のアドバイスを受けて適切に対処をしておくことによって、適正な慰謝料請求ができる可能性が高まります。交通事故後すぐに示談交渉が始まらないことも多いですが、当面の対応方法を確認しておけば、正しい対応ができ、後の慰謝料請求に有利になっていくでしょう。
交通事故示談を弁護士に相談するタイミング②:症状固定後、示談開始時
症状固定して具体的に保険会社と示談交渉に入ったその時点も一度弁護士に相談するのによいといえるでしょう。
なぜならば症状固定をへたことで、具体的に損害賠償金額がいくらになるかを算出できるようになり、「自分はこれくらいの損害賠償金額を請求できるんだ」と正しく認識できるためです。
ただこの金額算定は、複雑な計算式を用いるものが多く項目数も多いため、素人が行うよりも法律のプロである弁護士に依頼した方が正確な数字が出ます。よって、このタイミングでも弁護士に相談するのがよいでしょう。
交通事故示談を弁護士に相談するタイミング③:相手方保険会社が示談金を提示したとき
保険会社が示談金として金額を提示したときも、やはり弁護士に相談するタイミングとなります。
納得がいかなかったとき、妥当性がわからなかったときなどなど諸事情はありますが、基本的に「金額を提示されたとき」は弁護士に相談するタイミングとなります。妥当性の判断や金額の増額を自分で行おうとしても、知識・経験不足からうまくいくことは少ないです。早い段階で弁護士に相談し、交渉を依頼するとよいでしょう。
ただし、弁護士に早期に相談したからといって必ずしも慰謝料が上がるとはかぎりません。
実際に相手の保険会社から示談金の提示があってから、納得できずに弁護士に相談・依頼して慰謝料が増額した事例もたくさんあります。
つまり、もう遅いと思って弁護士に相談することをあきらめる必要がないということです。気づいたときに弁護士に相談することを検討しましょう。
交通事故の示談には「時効」が存在する~損害賠償請求権の失効
長期間交通事故の示談を行わないでいると、保持している「損害賠償請求権」を失効してしまう恐れがあります。示談に時効があるのではなく、損害賠償請求権が時効付きなのです。
そのため、示談を先延ばしにして放っておくと賠償金を受け取れなくなる可能性があるのです。
具体的には、交通事故の時効期間は事故発生後およそ3年になります。これは、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間です。
よって、事故後の通院が3年を超え、まだ症状固定しておらず示談ができないといったケースでは、いったん相手方保険会社に賠償金の請求手続きをしておくとよいでしょう。
また損害賠償の内容によって、時効の起算日に差があるので以下に記載しておきます。
- 物損事故の場合の時効
事故日の【翌日から3年】が損害賠償請求権の有効期間になります。
これは物損事故で届け出た事故が対象です。交通事故発生翌日が時効開始となります。
- 後遺障害が認められなかった、人身事故の場合の時効
同じく、事故日の【翌日から3年】になります。
交通事故により被害者がケガを負ったが後遺障害が認められない場合、時効は交通事故発生翌日が開始日となります。
- 後遺障害が認められた、人身事故の場合の時効
反対に、後遺障害が認められた場合の人身事故では、【症状固定日の翌日から3年】が有効期間です。
後遺障害申請が認定された場合、時効は医師による後遺障害診断書によるところの症状固定日が起算点となります。
- 死亡事故の場合の時効
交通事故により被害者が死亡してしまった事故の場合、【死亡日の翌日から3年】が損害賠償請求権の有効期間になります。
つまり事故後は重体であったとしてもその後に死亡した場合、時効は死亡した日から開始となります。
このように、交通事故後に示談を行わないでいると、およそ3年で損害賠償請求権が失効してしまうことがわかります。また、示談が長引いていても損害賠償請求権を失う可能性が出てくるのです。
よって、スピーディーに納得のいく結果を得ることが交通事故の示談においては重要であるといえるでしょう。
交通事故の無料相談はこちら
弁護士法人ステラ
0120-626-002